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2026 東海学生秋季リーグ 優勝 ~歯車が噛み合わなかった夏から~

[ 2022~ 中部大学 ]

2026年、東海学生ハンドボール秋季リーグ。中部大学は8勝1敗、勝ち点16で優勝を果たした。名城大学も8勝1敗。同じ成績で並んだが、直接対決で勝利した中部大学が1位となった。8月30日~10月11日まで約1ヶ月半、9試合を戦い抜いてつかんだ優勝。しかし、そこに至るまでの道のりは決して平坦ではなかった。

西日本インカレで突きつけられた課題。わずかな準備期間。代表活動や国スポによる選手の離脱。相次ぐケガそして、優勝を懸けた最終戦。歯車が噛み合わなかった夏から、チームは何を学び、どのように秋季リーグを戦い抜いたのか。少し振り返っておきたい。

【西日本インカレで突きつけられた課題】
8月に行われた西日本インカレ。中部大学は準々決勝で大阪体育大学に敗れ、ベスト8で大会を終えた。全日本インカレへの出場権は獲得したものの、目指していた結果には届かなかった。

春季リーグ終了後、チームの中心を担う2年生の村田とハリスは、U21日本代表の活動などでチームを離れることになった。ハリスは一時的にチームへ戻ったものの、ネクストジャパンの活動にも参加し、西日本インカレ直前まで不在の期間が続いた。攻守の中心選手がそろわず、チームとして十分な準備を重ねられないまま迎えた西日本インカレは大会を通して攻撃の再現性が低く、ウイングシュートで終わる攻撃がほとんどなかったことだった。バックプレーヤーの動きが中央に集まり、攻撃の選択肢を自分たちで狭めてしまっていた。

また相手と戦う以前に、苦しい展開になると粘りきれずに自ら崩れていってしまい立て直せない。プレー以外の部分でも課題が残る西日本インカレだった。

秋季リーグに向けて掲げた攻撃のキーワードは「ワイドアタック」。ウイングは早いタイミングでサイドシュートに飛び込む。バックプレーヤーはコートの横幅を広く使い、前に向かって積極的に仕掛ける。ウイングシュートの本数を増やすだけでなく、決定率も高める。再現性のある攻撃を展開していく。

西日本インカレでの敗戦を、ただ悔しい経験で終わらせるわけにはいかなかった。

【準備期間は、わずか6日間】
西日本インカレを終え、約10日間の夏休みを取った。チームが再始動したのは8月24日。秋季リーグの初戦は8月30日だった。実質的な準備期間は、わずか6日間。十分な時間があったとは言えない。それでも、限られた時間のなかで、何を優先し、どこまでチームの形を整えられるかが問われた。

活動再開時のミーティングでは、西日本インカレの結果を踏まえ、秋季リーグ終盤に対戦する名城大学、大同大学、中京大学の現在地を確認した。それぞれのチームが西日本インカレでどのような戦いをしてきたのか。それに対して、今の中部大学はどの位置にいるのか。

そして、約1か月後には、その相手と優勝を懸けて戦うことになる。対戦相手の現在地、自分たちの現在地を共有し、決められた期間の中に何をしていくのかを共有し秋季リーグへ向かっていった。

【選手がそろわないなかで始まったリーグ戦】
8月30日、秋季リーグが開幕した。初戦の南山大学戦は38対26で勝利。翌8月31日から9月17日までの約3週間、ハリスが日本代表のトレーニングパートナーとして国内合宿に参加。9月5日、6日、13日の第2~4戦をチームから離れることになった。

国スポに向けて活動していた選手たちもいた。2年生の平井、有馬、北川は、それぞれ三重県代表、京都府代表として大会に臨む予定だった。3年生の船木も山梨県代表として活動していた。一方、平井は夏休み中に肺炎を発症。チームの活動再開後も休養を優先し、最終的には国スポ本大会への出場も断念した。

4年生の副将・林田も万全の状態ではなく、開幕戦を欠場。主なゲームメーカーである平井と林田が揃わないなか開幕戦を迎え、翌週から主砲ハリスも代表活動でチームを離れることになった。
そんな状況でチームの起爆剤になったのが1年生の山根だった。鋭く切れ込むフェイントで攻撃をけん引し、思い切りのよいプレーでチームに勢いをもたらした。

そして、4年生の池田も攻守にわたって存在感を発揮した。普段はハリスのリリーフとして出場することが多いが、ハリスが不在となった試合ではスタートから出場。躍動感あふれるプレーで攻撃だけでなく守備でもチームを支えてくれた。

誰かがいないからできない、ではなく、今いるメンバーで何ができるか。開幕直後の戦いは、チームの総合力が問われる時間でもあった。

【不在の時間も、チームの準備期間に】
西日本インカレでは、チームとしての準備や情報共有にも課題が残った。その反省を、秋季リーグでは生かしたかった。

国スポや代表活動でチームを離れている選手にも、負担になり過ぎない範囲でチームや個人の状況を共有する。週末の試合映像や練習の振り返りも届け、離れていても準備の流れが途切れないようにした。選手がそろわないこと自体は変えられない。しかし、離れている選手をチームの外に置いてしまうのか、それとも離れていても一緒に戦っている状態をつくるのか。その違いは大きい。

9月13日の愛知大学戦を終え、9月19日の岐阜聖徳学園大学戦から、ハリスがチームに復帰した。代表活動を終え、再びチームの一員としてリーグ戦を戦うことになった。序盤を支えた選手たちの経験に、主力選手の復帰が加わる。少しずつ、チームの形が整っていった。


【ハンドボール以外のことを大切にする】
リーグ戦が始まってからも、日常生活の課題は残っていた。もっと言うと、春季リーグから西日本インカレに向けて出ていたハンドボール以外の課題がそのまま残っていた。

寝坊、遅刻、忘れ物、体調管理。

試合に勝つことだけを考えていても、チームがよくなるわけではない。ハンドボールに集中するためには、ハンドボール以外のことを大切にする必要がある。時間を守ること、自分の体調を把握すること。日々の小さな行動が、試合当日の準備やパフォーマンスにつながっていく。

リーグ戦のなかで何か問題が起きたときには、そのまま曖昧にして終わらせない。チーム全体に共有し、「優勝するにふさわしいチームとは何か」「そのために自分たちに何が必要なのか」を考える機会にしてきた。

日常生活がハンドボールに繋がっている。ハンドボール以外のことを大切にするから、ハンドボールに集中できる。

【29名がコートに立った秋】
今秋のリーグ戦では、ベンチ入り16名の選考方法についても、段階的に見直した。開幕から3試合は、選手全員の投票で14名を決め、残る2名をスタッフが選ぶ方法を採用した。最初の3試合を終えた段階で、その後の選考方法を改めて検討し、4~6試合目も投票を継続した。そして、終盤の7~9試合目は、春季リーグと同様に、主将・副将とスタッフでメンバーを決める方法に戻した。

選考方法を変えれば、全員が納得するわけではない。それでも、選手がチームの一員として考え、関わる機会をつくりながら、最終的にはチームとして判断していく。

今秋のリーグ戦では、29名の選手が公式戦のコートに立った。そのうち4名が公式戦デビューを果たした。1、2年生の有望な選手が経験を積み、3年生も日々の取り組みを通して出場機会をつかんだ。初出場ではなかったが、29名の中には2年生の春季リーグ以来にゴールマウスに立った4年生GK濱の姿があった。

【西日本インカレ王者・名城大学との一戦】
9月26日、名城大学との対戦。名城大学は、西日本インカレを制したチームだった。決勝では、中部大学が準々決勝で敗れた大阪体育大学を相手に勝利していた。準決勝の中京大学戦も延長戦にもつれ込む接戦を制していた。

その名城大学と、秋季リーグで対戦する。この時点で両チームは6戦全勝同士。優勝を争ううえでも、非常に大きな一戦だった。

結果は36対34。中部大学の勝利。

西日本インカレで見えた課題に向き合い、選手がそろわない時期を乗り越えながら積み重ねてきたものが、結果として表れた試合だった。なかでも、主将の三浦の活躍は大きかった。GKとして前半から出場し、試合を通してゴールを守り続けた。大学に入ってから、これほど長い時間を一人で守ったのは初めてだったかもしれない。

ハーフタイムには、自ら「後半も行かせてほしい」と申し出てきた。初めてのことだった。

普段、コンビを組む有馬が国スポで負傷離脱して以降、毎試合コンビを組む相方が変わる中でも、落ち着いてゴールマウスを守り続けてくれたのが三浦だった。チームを勝たせたい。その思いが伝わる名城大学戦の三浦のプレーだった。西日本インカレでの敗戦から、確かな成長を感じられる勝利だった。

【勝利の翌日に突きつけられた課題】
名城大学に勝利した翌日、9月27日の大同大学戦。試合開始から約10分。前日の試合でゴールを守り続けた三浦が、足を痛め、苦悶の表情でベンチに戻ってきた。

「足を痛めました…」

突然のアクシデントだった。代わってゴールを守ったのは、2年生の大城凪。約50分間、悪戦苦闘しながらゴールを守り続けた。

前半を終えて9-17の8点ビハインドだった。西日本インカレでは、ここから一気に崩れていたかもしれない。

ハーフタイムのベンチではライドウイングの平田が「戦術的なことも大事だけどさ、やっぱ、目の前の相手に勝たんと勝負にならんよ。シュート決め切ったり、体を張って守ったりってところからじゃね?」とみんなに問いかけていた。

負傷した三浦の「後半みんな頼む」と託す姿があった。

後半開始。チーム全員で声を掛け合い一時2点差に追い上げるなど、怒涛の反撃を見せたが、最終的に27対32の5点差で敗戦。

試合後、三浦の後を託された大城凪は涙を流していた。チームとしても、本人にとっても、悔しい敗戦だったと思う。ただ、その経験もまた、これからの成長につながるものにしてほしい。

この試合では、就職活動のために4年生の左腕・向田も不在だった。向田の不在については事前に共有し、チームとして準備していた。しかし、三浦の負傷は想定していなかった。さらに、試合の終盤にはようやく調子を上げてきていた司令塔の平井も負傷。

国スポで足を痛めていた有馬に続き、三浦、平井と、重要なポジションを担う選手たちにケガが重なった。

名城大学に勝った翌日の敗戦。勝ち点を積み重ねることだけでなく、選手のコンディションをどう守り、チームをどう整えるか。改めて難しさを突きつけられた。

【2週間の空白と、優勝を懸けた準備】
大同大学戦を終え、秋季リーグは最終戦まで2週間の間隔が空いた。例年であれば、毎週末に試合があり、土日に連戦することも珍しくない。三重バイオレットアイリスの監督時代が日本リーグの空き週は何度も経験していたが、中部大学に移ってきてからは初めてのことだった。当然、学生たちのとっても初めのことである。

当然ながら、この2週間をどう過ごすかが最終戦に向けての鍵になる。ケガを含めて、コンディションを慎重に状態を見極める必要があったのは、5名。国スポで足を痛めたGK有馬。大同大学戦で負傷したCB平井とGK三浦。連戦による疲労が蓄積していたLBハリスと、3年生のPV増田。

空き週末の練習試合では有馬が試験的に復帰し、まずまずの動きを見せた。一方、ほかの4名は出場を見送った。最終戦の週に入ると、トレーナーの井田さん、三浦本人と相談し、最終戦に出場しないことを決めた。その決断はチーム全体にも共有した。残る4名については、選手本人と井田さんを交え、日々状態を確認した。

優勝を懸けた大切な試合であること。それぞれの選手の状態。そして、その後に控える全日本インカレ。リーグ戦の空白期間があったことで、全日本インカレに向けた準備期間は例年よりも少し短くなっていた。目の前の優勝だけを考えるわけにはいかない。しかし、4年生にとっては最後の秋季リーグでもある。

平井、ハリス、有馬というチームの中心を担う2年生たちは、多少のリスクがあっても試合に出たいという思いを強く持っていた。4年生に優勝を届けたい。その気持ちがあった。一方、三浦や林田をはじめとする4年生は、責任感の強い2年生たちが無理をしてしまうことを望んでいなかった。

秋季リーグの優勝も大切、全日本インカレへの準備も大切。選手の気持ちはよく分かる。勝ちたいし、優勝したい。最後のインカレも万全で臨みたい。トレーナーの井田さん、須坂コーチとも何度ども話し合った。

井田さんからの最終的な報告はこうだった。「三浦以外の4名は、全員出場できるコンディションです。今も横ばいや悪化はなく、日に日に上向いています。」

最終的な16名のベンチ入りメンバーを決めた。三浦はベンチから外れた。一方で、有馬、ハリス、増田、平井の4名は、井田さんとも状態を確認したうえでメンバーに入れた。

この時に三浦から言われた言葉がある。「あいつらは絶対に自分たちでやっちゃうんで、最後は櫛田さんがブレーキかけてください。頼みます。」最終戦、前日のことである。

【勝てば優勝、負ければ4位】
最終戦を迎える時点で、名城大学、中京大学、大同大学、中部大学の4チームが7勝1敗で並んでいた。どのチームにも優勝の可能性が残されていた。そして、最終日。中部大学と中京大学の試合の前に行われた名城大学対大同大学の一戦で、名城大学が勝利した。これにより、中部大学の最終戦は、勝てば優勝、負ければ4位という状況になった。

相手は中京大学。試合は最後まで簡単な展開にはならなかった。結果は31対30。1点差で中京大学を下し、中部大学が秋季リーグ優勝を果たした。


【主将と副将、それぞれのリーダーシップともう一人の4年生GK濱】
最終戦、主将の三浦はコートに立つことができなかった。それでも、応援席からチームを鼓舞し続けてくれた。

代わりにキャプテンマークを巻いてコートに立ったのは、副将の林田だった。試合開始から安定したゲームメイクを見せ、チームを支えた。コートの中だけでなく、ベンチに戻ってきてからもリーダーシップを発揮し続けていた。タイムアウトのたびに、「自分たちのやることを徹底するぞ」と声をかけ続ける姿がそこにはあった。試合の流れに左右されそうになる場面でも、自分たちがやるべきことを見失わないように、仲間に働きかけていた。

主将が応援席から声を届け、副将がキャプテンマークを巻いてコートでチームを率いる。

立つ場所は違っても、二人とも最後までチームのためにできることをやり続けていた。

そして、優勝が決まった瞬間。喜びと安堵が一気に押し寄せたのだろう。コートに崩れ落ちる林田の姿があった。

もう一人の4年生GK濱。前半ゴールマウスを守った2年生GK有馬の後を受け、後半からゴールマウスに立った濱。

この2年間、我慢の連続だった。西日本インカレのメンバーからも外れていた。この秋リーグ序盤に久しぶりに公式戦のコートに立った。それに満足することなく、それ以降も虎視眈々と狙っていた。主力GK陣にトラブルが相次ぐ中で、ずっと濱はこの時に向けて準備していた。静かに準備し続けていた。

セーブ率 9/24 38%。

前半の有馬のそれを上回る活躍だった。4年生の意地だった。

【歯車が噛み合わなかった夏から】
春季リーグは8勝1敗で準優勝。西日本インカレではベスト8。そこから始まった秋季リーグは、選手がそろわない状態での開幕となり、代表活動や国スポによる離脱、けが、そして最後まで続くコンディションとの戦いがあった。

9試合を戦い、8勝1敗。総得点331、総失点235。

一つひとつの試合を振り返れば、うまくいったことばかりではない。課題も残ったし、悔しい敗戦もあった。優勝したから、すべてが正しかったわけではない。優勝できたから、課題がなくなったわけでもない。大切なのは、この秋季リーグの経験から何を学び、次にどうつなげていくか。ハンドボールを通して身につけてほしいものは、試合の勝ち負けだけではない。秋季リーグ優勝。

歯車が噛み合わなかった夏から、選手たちは一つずつ課題と向き合い、秋季リーグの優勝に繋げてくれた。ここで立ち止まることなく、全日本インカレに向けて、また一歩ずつ積み重ねていきたい。

応援してくださった皆さん、本当にありがとうございました。

【2026年度 東海学生ハンドボール秋季リーグ戦 中部大学の結果】
8月30日 中部大 38-26 南山大
9月5日 中部大 42-26 名古屋大
9月6日 中部大 33-21 朝日大
9月13日 中部大 45-24 愛知大
9月19日 中部大 31-22 岐阜聖徳学園大
9月20日 中部大 48-20 愛教大
9月26日 中部大 36-34 名城大
9月27日 中部大 27-32 大同大
10月11日 中部大 31-30 中京大

最終成績:8勝1敗・勝ち点16 優勝

・最優秀選手賞
林田崇希(CB/4年生)
・優秀選手賞
平田海里(RW/4年生)
齋藤柊 (LW/4年生)
村田大希(PV/2年生)